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works4Life

飯と酒と時々GTD

欲張る上司

家にかえってくると、同居人が呆然としていた。なにごとかとたずねたら、こうだった。

「いつもの通りがんばってたら、上司に「まわりの面倒はみているけども、自分自身の実績が悪い。こんなんじゃ困るよ!」と言われた。なので、最大出力で自分の仕事をやった。外出してきて、へとへとに帰ってきたらさっきの上司に「いつもこれぐらいしてもらわないと困るよ」て言われた。これぐらいのペースを維持しろって土台無理だ。どうしようかほとほと困っている」

友人は有能だ。本人自身は謙遜と自負の入り交じった自己評価を私に言ってくるが、私からみて、私の知りうる人間の中では有能な人間だ。 友人は今年からマネージャー層になって、人を見る立場になった。ずいぶん見通しがよくなったと喜んでおり、メンバーの面倒もこれ以上なく見ており、なおかつ、私にそれを説明するぐらいに自分が行っていることを把握している。

メンバーの顔が変だと感じると声をかけ、実績の声かけは頻繁に行い、実績がよければ褒美におごる、ちなみに今回の何かできた時にする声かけは「すごい、デキル男(女)だな!」というので統一されている。全体で課題がでてくれば、メンバーをひきつれてパワーランチをする。そして怒らない。正直私の上司にほしいぐらいだ。だからこそ、長年同居もできるわけではあるのだが。

そんな面倒身のいい友人は、メンバーに対してはものすごく評判がいい。隣の部のメンバーからも、ものすごくうらやましそうな顔でみられるというのだ。というのに、上司にはすこぶる受けが悪い。しかし本当に受けが悪いのか?

変わりつつある上司

友人の上司に対する私の印象は、当初というか、ここ数ヶ月間聞いた限りでは、好印象のもので、それなりに話の通じる上司のようだった。しかし、ここ数日になって、印象が変わった。上司は、いきなり強気な態度で友人に接してきたのである。

友人の名誉のためにことわっておくが、友人は上記のメンバーに対するマネジメントに加え、自分自身の実績となる仕事もこなしている。そちらの仕事についても、最大限の力で処理している。冒頭で友人が言った「いつも通り」のレベルはこのレベルだ。私はずいぶんよくやっているどころか、そんなに頑張りすぎちゃって大丈夫なの、と心配になるぐらいである。

しかし、上司はそれでは満足せず、実績の悪さを指摘した。そしてその結果に対して、対策をとった友人の最大出力120%ぐらいの活動量を求めはじめている。

これはどうしたことだろうか。まだ話のわかる上司だったのに、一体なにが起こったのだろうか?

思うに、上司が欲張り始めたんだと思う。

上司が欲張りはじめた理由

友人の会社では、会社全体で支店があるので支店ごとに実績を比較する。メンバーの実績は部の実績となるわけだが、支店の実績で上位を目指すとなると、好条件がそろわないと難しい。それが今、現在の部がその好条件が揃っている。それで、今まで夢を見なかったはずなのが、実績表に名乗りをあげたくなりはじめたのでは、というのが私の憶測だ。

そういう欲張りが始まると、実際活動しているメンバーの状況は全く気にすることがなくなり、数値だけを求め、実行不可能な無茶な難題を振りかけ、そしてメンバーからはものすごく嫌われる。数値を出すことは当然で、でなかったら「どうしてでなかったんだ」といい、その数値を出すことが順当になれば、「もっと数値を!」と欲を書き出すのである。それが、友人の今の上司のように見えてならない。

この姿は、何も会社に限った話ではない。天才子役が風靡した後、父母が離婚した話題を聞くのはよくあることだ。教育ママだって欲張る上司の一形態だ。

欲張る上司の特徴は、褒めないことだ。自分自身の欲を張るために、それを実現するメンバー自身には何も省みず、結果だけを求めて褒めもしない。なぜなら成果を出すことは、メンバーにとっては当然のことと見なされるからである。メンバーがフラストレーションをたまらせるのも当然である。

友人がグチをこぼした。

「思い切りがんばっても、当然だって言われたらやる気なくす。ハーバードビジネスレビューのスター社員が会社を去る理由、ていうのがあったけど、全くその通りだ」

初出:2010/11