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works4Life

飯と酒と時々GTD

読書ログ 「お金の大事な話」でした追体験

私にとって、本は仔細に刻み込まれた魔方陣そのものだ。魔方陣は、異界へ導くゲートであって、この世ならざる場所へと誘う。魔方陣の作りし者の、再現しようとしたものに、深く深く潜りこんで行けるのだ――などという酩酊するような経験は、本を大概に読んだとしても、なかなかに経験しえないものだ。何がどう悪いわけでもなく、ある一定の条件が揃った時、それは偶発的に起こる。

今回紹介する本は、その偶発的に起こった酩酊的経験をもたらした。

 

お金の大事な話

 

この本は、お金の大事な話を書いている。書いているんだけれども、どちらかというと、著者が慕っている星さんとの対話みたいな話になっている。著者が段階を踏んで、お金について学んでいった内容を、読者の私たちにも追体験できるような話の構成だ。

ちなみに、お金の大事な話については、この本にたっぷりと書いている。内容も素晴らしい。だから読むのが一番いいと思うので、今回は詳細については特に書かない。今回書くのは、著者のこの本に対する心意気の素晴らしさについてだ。

 

500円という値段とカバーデザイン

実は、この本を買った時、あんまり期待してなかった。書店で平積みにして並んであった本で、500円と気軽な本だったものだから、気軽に買ったのだ。そしてこの行動は、この本が意図する通りの行動だった。500円は、そういう「気軽に買う」のを促すために、つけられたものらしい。

そんでもって、本のカバーデザインは、500円をテーマにつけられているようにも見える。白地に金色の五円玉の柄を模している。円の中心が空いているからだ。では五十円ではなく、五円なのか? それは、この金目の色合いからだ。五円玉の色に似ている。

そして五円玉にはもう一つの意味合いがある。それは、御縁。

 

御縁のある星さん

著者の人生の中で、関わった人というのは欠かせない。特に星さんなくして彼のこの話はできなかっただろう。星さんは、私から見ると、彼にとって、すばらしい師だ。状況に的確なアドバイスをし、そして実現がちょっと難しいけどがんばると手が届きそうな課題を与える。

星さんと彼との話は秀逸で、どちらかといえば、この本は星さんを通じて彼が成長してきた話ともとれるのだ。「星さんと僕」というタイトルでもおかしくないぐらいだ。

そんな星さんと彼であるが、関わりのあるのは、もちろん星さんだけではない。いろいろな人と関わりあって、会社を興したりすることができたのだというのが、本の随所からうかがいしれるものだ。星さん自体も、彼の前職での場所で知り合った人である。

御縁はどこに転がっているかわからないものだ。

そんな素晴らしい師に恵まれた著者に対して、穿った見方をすれば、この本は「へーへー、そんないい人に恵まれてよかったですねー」と、見えかねない。しかし、そんな自慢をしたいからこの本は生まれたわけではない。彼が経験してきた内容を、つまびらかに話すことで、私たち読者にも、星さんとの対話を追体験させてくれようとしているのだ。

 

 

この本は、著者の誠心誠意をもってして、生まれた。

内容が誠実であり、丹念に言葉を選び、語っている。それでいて本の価格は500円だ。

実際、ふつうの本で500円という値段は微妙だ。お金の大事な話をするから500円なのか、大事ではないから500円なのか、測りかねるところがあるからだ。今回は、前者だ。

500円にあるまじき、丁寧な、心のこもった本だった。

 

感銘を受けるか、自慢話と受けるか

今回、私はこの本に大いに感銘を受けた。著者がこの本を通じて言いたいことに、大きくふれられた。けれども、それは偶然に起こった出来事で、別の状況で本を読んだとして、同じ感銘を受けられたかどうかはわからない。読んだその時に、私の神経が腐っていたら、きっと私はこの本をまっすぐに受け止められなかったかもしれない。

だから、私は幸運だ。今回、このような感銘を受けられたことに、それを感銘を受けたと自分自身が感じていることに、そのような状況に自分がいることに。

本の読み方は、読む側にゆだねられている。今回の本にしたって、感銘を受けることもできるだろうし、単なる自慢話にも見えてしまうかもしれない。

それでも、本には意図する伝えたいことがある。私は、できるものなら、意図する伝えたいことを受け取りたい。それを正確に受け取れた時、私は心奮え、心臓を鷲掴みされたような気持ちになり、心地よい酩酊感に浸れるのだ。最上の理解を通じて、著者の異界を我が身の世界で実現できたということなのだから。

 

余談:

この読書ログは、もともとR-styleの第1回の書評企画に送るつもりだったが、結局送れずじまいでいつリリースしようかと思っていたところ、運よく(?)第2回の書評企画があったので、合わせてリリースしたものである。