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読書メモ 「まさか!? 自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠」

まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠
マイケル・J・モーブッサン
ダイヤモンド社 ( 2010-04-09 )
ISBN: 9784478012284

 

意思決定に興味のある人が読むといい本である。

今日、予測というものは、複雑な環境の中専門的な知識による予測の%より、多様な人間から集めた予測の%の方が高い。それはともかくともして、意思決定する際にはいくつか陥りやすい罠があるので、今一度考えなおすことをオススメする――というのが、本の趣旨と解釈した。

しかし、ここでいう多様な人間の集合を作るのが難しい。とある作ったグループが、たとえば日本の年齢分布と同じ比率で存在しているわけではない。みんなの意見が正しいといわれるものの、みんなの意見が偏ることも多いのには、そもそも「みんな」が偏っている場合もある。

 

 

以下メモ。

 

制限された状況が必要というか。将棋に時間制限がないと試合にならんというらしい。

「『頭がいい人』は、何をすべきかを教えないといい結果が出せない」とスタノビッチはこぼしている。

– P7

 

 

前後関係をあたかも存在するように情報を見せかけるということもあるわけで。

しかし、前後関係のない情報は、何の役にも立たない。もしも自分のしようとしている意思決定がはらんでいる問題を適切に理解していないとしたら、これらのデータは意思決定の正確性を向上させないし、実際には誤った自信につながることもある。

– P14

 

意思決定をする際には、複雑な状況があるということ。

最も難しい決断は、不確定要素を含んでいて、起こり得る結果を確率として表現することしかできない場合もある。さらに、不完全な情報しかなくても決断を下さねばならない状況は多い。

– P15

 

貧乏な人ほど宝くじを買う金額が大きいそうな。

特筆すべきは、能力が低い人ほど、実際の能力と、自分が思っている能力との間のギャップが大きい点である。

– P28

 

見積もりの難しさ。プログラミングしていたころは、だいたい自分が想定している時間x1.5が相当していた。

もし読者が、家の改築工事、新商品開発や締め切りのある仕事といったように、何かのプロジェクトに関わったことがあるなら、これから話す例には共感してもらえるかもしれない。仕事にかかる時間やコストを見積もるのは難しい。正しく見積もれない場合というのは、通常、時間とコストを少なく見積もりすぎるのだ。心理学者は、これを計画錯誤と呼んでいる。大多数の人は何かを計画する時に主観的な視点でしか見られないのだ。自分や他人の経験から基準となる客観的なデータを得て、そこからスケジュールを立てる、といったやり方ができる人はわずか四人に一人であるという研究結果が報告されている。

– P35

 

反対に言えば、未来を考える人間にはストレスをかけすぎないのがいいというわけか。

スタンフォード大学の神経生物学者ロバート・サポルスキーは、ストレスの分野におけるエキスパートであり、一番注目すべきは、ストレスによって人間は長期で考えることができなくなり、長期的なものを司る人体の機能も停止してしまうという点だという。

– P65

 

専門家のできること、そして活躍できる状況。

専門家になる、あるいはエキスパートになる、ということはその分野の特製を熟知し、その分野特有の状況を瞬時に判断できるようになることであり、それができるようになると、素人よりも一段深く分析したり考察したりする余地ができるのである。よって、専門家の特性を挙げると以下のようになる。

・専門家は、その分野のパターンを認識している

・専門家は、初心者よりもすばやく問題を解決する

・専門家は、初心者よりも奥深くまで問題を掘り下げて考えることができる

・専門家が提示する問題解決法は、初心者のそれよりもクオリティが高い。

したがって、直感がうまく機能するのは安定した環境下であり、チェス盤と駒のように条件が一定であり、一つの動きに対する反応がわかりやすく、因果関係もシンプルな時である。ただ、自分のいる状況が変化に富んだ、複雑なシステムであれば直感は機能しづらいのだ。

– P95

 

P35の判断基準に対して実績に適用した例。

転職希望者が殺到するあまり、面接が会社にとって多大な負担となることがわかったグーグルは、会社に適した人材を確保するためにアルゴリズムを導入することに決めた。まず、候補者の能力、仕事に対する姿勢、個性に関する三〇〇の質問に答えるよう指示した。その結果を実際の従業員の業績と比較したそうだ。そこで得られたデータから、学業成績が常に仕事のうえでの能力と関連しているわけではないとの見方を固めた。このデータをもとにしたアプローチによって、グーグルは多くの無意味な面接に労力を割くことなく、会社に適した人材の確保を進めることができた。

– P101

 

選択アーキテクチャはそのままデザインにも反映されるであろう。デザインとは、形をして、相手にせしむる行為である。

講演家として知られるある著名な心理学者が、いかに選択アーキテクチャが一般には理解されていないかという話を私に語ってくれた。いろいろな会社が彼に講演依頼をする際に、彼は二つの選択肢を提示するそうだ。一つは、彼に講演料を支払って標準的なプレゼンテーションをしてもらう、という選択。もう一つは、講演料は無料で、選択アーキテクチャを改善するためのマーケティングテスト(例えば、その企業が顧客に記入してもらう用紙の選択肢を変えたり、ウェブサイトの設計を変えたりするようなこと)を彼とする、という選択。もちろん、彼にとっては、実際に選択アーキテクチャを変更したテストができる方が、研究材料になるので好ましい。それに、企業にとってもよい提案に思えるのではにだろうか。なぜなら、講演料を払わないで済むうえに、自社のマーケティング上の選択アーキテクチャを改善したら、実際に利益が得られるかもしれないからだ。だが、いまのところ彼の実験の提案を選択した企業はただの一つもない、と彼は悲しげに語っていた。

– P119

 

「複雑な環境の中専門的な知識による予測の%より、多様な人間から集めた予測の%の方が高い。」の理想的な姿。ハチが一様であるがゆえに可能。

ここまでのところ、何ら特別なことはない。しかし、ここに科学者たちを驚かせたものがあるのだ――群衆心理を想像すると、ハチの巣の中でどの新しい住処に向かって飛ぶかが決定されると考えがちであるが、実際はそうではない。ハチは、将来の住処となりそうな場所に行って、その場で選択するのである。一五匹程度のスカウト役のハチが集まるのを発見すると、ハチは定足数に達したと感じるのである。その後、それらは群れに飛んで帰り、他のハチを刺激して、新しい住処へと導く。

– P136

 

関連図書

選択の科学
シーナ・アイエンガー
文藝春秋 ( 2010-11-12 )
ISBN: 9784163733500

 

前後して読んでいたこちらの「選択の科学」という本も素晴らしい。この本のテーマは「選択」についてであるが、二つのうち一つにしぼるという行為も意思決定の一形態であるのだから、意思決定に関して本を読みたいのなら読むのをオススメする。

特にこの本は、文章の構築が並々ならずに洗練されている。本という世界を構築するのに成功した、数少ない本である。