新訳版を入手した
プレゼントキャンペーンに運よくあたり(有難うございます)、今私の手元に新訳版がある。「仕事を成し遂げる技術」と「ストレスフリーの整理術」が揃ったわけだ。これらの原本として「Getting Things Done」があるわけだが、思うところをまとめようと思う。
今回の本旨は以下三点である。
・「Getting Things Done」の訳と理解のし易さを区別すること
・そもそも「Getting Things Done」の本を理解しにくい人種がいること
・「Getting Things Done」はGTDにとって殆どを網羅している本なので、GTDを正確に修得したいならば、必ず読むこと
ちなみに、内容自体は「仕事を成し遂げる技術」と同じなので、具体的な感想については、そちらの書評を見て頂きたい。
名称のまとめ
ところで、話す前に名称についてまとめておこう。
「Getting Things Done」は、一番初めにDavid Allenが出版した本そのものを指し示す。「仕事を成し遂げる技術」も「ストレスフリーの整理術」もこの言葉に含まれる。
「仕事を成し遂げる技術」「旧訳」は、「Getting Things Done」の本のうち、旧日本語訳版を示す。
「ストレスフリーの整理術」「新訳」は、「Getting Things Done」の本のうち、新日本語訳版を示す。
内容そのものを示す場合は「Getting Things Done」を、翻訳に特化した内容や本の体裁については「旧訳」「新訳」を、といった使い分けを行う。以降ではそれを前提に読み進んでいただきたい。
「Getting Things Done」の訳と理解のし易さを区別すること
日本でGTD関連の本をみると、「旧訳」の訳の問題に関して避けることはできない。「旧訳」の訳で、「Getting Things Done」を読むことや、GTD自体をすることを遠慮している人が、日本に存在する。
訳が難しいからGTDは難しいのか、訳が難しいからGTDは分かりにくて更に疎遠になってしまうのか、その点については微妙な所である。ただ、訳の難解さのコメントから、「訳が難解なのでGTDはわかりません。けれども、訳がわかりやすくなったら、私もGTDを理解できるようになるでしょう」という印象も一部感じる。確かに、一部では道理でありつつも、一部ではそうではない。
訳の分かり易さと、理解のし易さは区別するべきである。混同すると、どのような弊害が起こるかは次で説明する。
そもそも「Getting Things Done」の本を理解しにくい人がいること
ところで、「ストレスフリーの整理術」を読んで、実際の所理解しにくいな、と思った人はいるだろうか? 私は、正直理解しにくかった。これは「仕事を成し遂げる技術」からも同じく感じていたものなので、予測の範囲の反応である。
私が理解しにくいのと同様に、「訳が理解し易くなれば、GTDを理解できるだろう」と思っている人が、「訳さえわかりやすくなれば、理解できるはずだと思ったのに、どうして理解できない!?」と、感じることがあるんじゃないかと、心配している。先ほどでは、「訳の分かり易さと、理解のし易さは区別すべきだ」と述べたが、その理由はこのような反応があることを思ってである。では一体なぜ、訳が読みやすくなったというのに理解しにくいのだろうか?
処理ステップの内容が二つの視点を内包しているという点から見ても、「Getting Things Done」自体の分かりにくさは、GTD自体に含まれていることも自明である。それ以外にも、文章フォーマットと構成そのものとの二つが関係している。
最初に文章フォーマットである。文章フォーマットは、極めて会話型的である。特に第2章は長く、冗長だと感じる人がいるかもしれない。その長さゆえに、全体の構成が捉えにくく、書かれている内容がどんな状況なのかを、イメージするのが困難で、あれよあれよという間に第2章が進んでしまう。そして結局わからない、という結果になりうる。
私はこの経験を「旧訳」でも「新訳」でも味わうことになった。特にどんな状況なのかをイメージしにくいのは、書中で説明もなく面子が増えることもあるからだ。プロジェクトの話の中で、参考資料がいきなり現れ出てくることがある。もしかすると、それ以前のどこかで書かれてるかもしれないが、文章の長さで記憶が飛んでしまっていたりする。また、処理ステップでは、図式化した完璧なワークフローがあるにも関わらず、その枠に沿って説明されてはない。
これらのような、ざっくばらんな文章フォーマットをしているため、読んでいる間に完全な枠組みを頭の中で組み立てることはできない。理解するのに、分析や統計・系統や骨組みを必要とするような人間は、非常に理解に苦しむことになる。
次に構成である。GTDは、今までの時間管理や仕事管理とは、根本的にごっそりと異なる。しかしながら、その部分をざっくりと話を進め、どこがどう異なるかを「Getting Things Done」ではあまり説明しなかった。そのため、読者が培ってきた時間管理や仕事管理に、GTDも当てはめて考えてしまい、誤解を産みがちだ。現に、「ストレスフリーの整理術」を読んだ方でも、同じような誤解をされている人を見かけた。
しかし、この点についてはアメリカ人と日本人の文化の違いに寄るところも多い。日本人の一部では、時間を基本として考える人がいる。この時間の軸から外れることが、まず最初の難関であることも多いのだ。とはいえ、これについてはいたし方のないことである。
訳の云々に関わらず、「Getting Things Done」は、そもそも理解しにくい部分を持っているのである。
「Getting Things Done」は、GTDを正確に修得したいならば、必ず読むこと
一作目にして全書
さて、表層の話はこれぐらいにして、内容について語ろう。内容に関しては絶賛だ。絶賛する理由は下記による。
・必要充分な内容がまとまっていること
・初心者から上級者まで充分な内容が備わっていること
・2年ほど実践した今でも、反例が出てこないこと
・実施する時点で必要な問題点についての回答が多数用意されていること
必要充分な内容がまとまっていること
この本の大きく示す理由は、仕事関連の内容に関して、必要最低限でありながら必要充分な内容の項目が記されていることだ。5つのステップ、7つのリストは勿論のこと、ナチュラルプランニングや、実行する際のモデル、そしてパースぺくティブなモデルについても、充分に必要で活用できうるものだ。
どれ一つとして、活用できるものとして、非常に役立つという
ことが大きなポイントである。
初心者から上級者まで充分な内容が備わっていること
尚且つ、全書として推薦するに値する理由は、初心者~中級者は2章目で、上級者は3章目で伝えるべき内容が網羅されているからである。特に3章目に関しては、GTDを通じて、この抽象的な考え方によくぞ行き着いたものだと、瞠目せざるをえない。
3章目に関して言うと、このこと自体は、GTDを続けていくうちに体感するものであって、正直GTDを始めてすぐでは実感しにくい。しかし、GTDの実装自体は、この章でかかれているものを内包している。自身のGTDの経験と、この3章目が結実した時、新たな局面を迎えるであろう。そのぐらい、すばらしい原則であるが、残念ながら水底にある宝箱なのである。
2年ほど実践した今でも、反例が出てこないこと
私が感心するのは、この内容に私から何の反例も出てこないことである。
例えば、私が何かの本を買ってそれを実践しようとした時、それが実行できないような状況や、実行したとしても効果を上げないような場合がある。その時点で、その本とはオサラバする。蛇が入った葡萄園の葡萄は胡散臭くなるものだ。それに、一つでも問題があると、それ以外の理論にも不信感を感じてしまい、全体的な信頼性が失われる。
そして、有効な項目だけ取り入れる。
ことになるのだが、この行為自体もそのうち苛立ってくる。なぜなら、それらはケースバイケースの内容であって、一つとして一貫性がないからである。取り入れた内容は、今現状の私に合っているから取り入れているのであって、来年、数年後の私には合わないかもしれない。その可能性は拭い切れない。
しかし、私は面倒なので、いついかなる状況に変わったとしても、有効な魔法の杖がほしいと思う。そして、GTDは私のそれになった。
私は2年GTDを続けてきたが、GTDのシステム自体が反故されるような反例に合ったことがない。かつ上に、多少の状況が異なったとしても、GTDの実装自体が多少変動するものの、原理自体ががらっと変わるようなことがないのである。この二年の間にも、他の管理方法を試してみたりするものの、結局はGTDのリストで管理するのが一番便利だという結論に行き着くのである。
嬉しいことに、GTDを、批難することができないのである。
実施する時点で必要な問題点についての回答が多数用意されていること
書評を見てみると、ダイジェストな内容を確認するので充分だ、というコメントを見かけることもあるが、GTDを深く理解し活用したいならば、本書を薦める。その内容は2章で全て網羅してあり、何か困った時に見直せば、既に回答がかいてあり、そしてその内容がベストアンサーだからだ。
例えば、GTDではファイルフォルダがいいと推薦していたが、それを用意するのは面倒だったので、私はクリアファイルで代用しようと思った。しかし、数日後にしてファイルフォルダである意図を理解するのであった。理由はインデックスだ。クリアファイルではインデックスがなく、非常に取り扱いしにくいことがすぐに明らかになった。
例えば、そのインデックスには機械を使ってラベルをしろと、本書では指定していた。でも面倒だったので、手書きでかいていたのだが、やはり機械を使ってラベルを作ってはっつけるようにした。なぜなら自分の字を見るのが嫌になったからだ。
これらのように、ことごとく項目はこうするのがベストだ、と思われていることが書かれており、問題になりうるケースのほとんどが、いずれの場所にかかいてある。本書を深く薦める理由は、これに尽きる。問題に立ち当たったならば、この本に戻って見直すだけで充分なのだ。
旧訳と新訳と
私はもちろん、「新訳」の方をオススメする。「旧訳」は絶版となって入手も難しく、見やすさ、取っ付き易さから見ると、やはり「新訳」の方がよいだろう。だからといって、「旧訳」がなければ、と思ったことはない。今までの私には、「旧訳」の存在自体が必要だったし、「旧訳」の難解さだからこそ、深く考えるようになったのかもしれない。
GTDを深く修得していくには、是非「ストレスフリーの整理術」を読んで頂きたい。