レビューがいろいろ試される春画展に参ってきた。
春画展、2013年から2014年にかけて遥かは英国で行っていたものを凱旋展示するとのことだそうだ。春画といえば、この前見た暁斎展でも春画を扱っていた。今回は、対象時期は江戸時代以前のものなので、暁斎君は今回は対象外で出てこない模様。この前出たところだしな。
そもそも春画とは、エジプトの頃から始まり多国にまたがって描かれたそうだ。日本は平安時代の頃だか中国からの伝来品で伝達され、見事に定着した。戦ではお守りがわりだったり、お祝い品だったりした春画はとりあえずよく流行った模様である。
タコ
今回の春画展でのメインの展示物は葛飾北斎の「喜能会之故真通」。何がすごいかというと、タコとやっちゃってる図解である。タコかぁ、タコだよ、しかも二匹…! 無駄に目が妙に光り輝いているように見えたり、構図もみっしりしっかりしている展がさすが北斎である。
しかもこのタコ、前からつねづね狙っていたと書かれていて、その執念さも何か旋律を覚えずにはいられない。
北斎と並び、喜多川歌麿も春画を出している。この二大巨頭の図はさすがで、ほかの春画と比べると極端に見やすくうまかった。個人的には喜多川歌麿の方が、私は好きである。北斎の方は絵に文章を追加したりしたが、喜多川歌麿は更に面白いことをやってみようとかそんな感じを受けた気がするので。紙を足していまでいうしかけ絵本みたいなこともしてたのが、喜多川だった。はず。
描くのが好きな人とそうでない人
春画を描く人はいろいろいるが、春画自体を描くのがすきな人とそうでない人でかなり絵のテンションが変わってくる。というのは、鳥獣戯画展でも思ったことだ。絵描きの嗜みのひとつ、食い扶持のひとつとしてとりあえず描く、あるいは依頼されて描かねばならぬといって、むしろその背景ばかりに力が入っている人もいた。
背景も人もがんばってるよー!という場合もあって、全体的に雅で麗しいものもあったりする。
展示会中実用的かそうでないかと談義にふける殿方もいたが、実際もって実用的でない。特に江戸時代は面白く見るためのもの、という方向性だったので、どちらかとあけっぴろげな感じは受ける。ただし、月岡雪鼎は違う。彼の絵柄というか肌の色はもう桃肌もよいところで、一番現代の作風でもありそうなタイプの絵柄であった。きっとこの作者の絵なら殿方の期待に応えられるであろう。
衝撃の展示物ベスト(?)3
そんないろいろ見た中で結構衝撃を受けたベスト(?)3を紹介する。
3位 エイ ~何でもいいのか~
相手がエイである。タコというのもなかなかだが、エイに気持ちを抱くのもなかなかのものである。エイはまさかそんなと思っているかもしれないが、海で泳いでいるあのエイである。
実際見たことがあるのかそれとも実地なのかは深い謎の海である。
2位 涅槃図 ~そういう神社はあるが~
釈迦が入滅する際にみんなが嘆いて回りを囲んで悲しむ仏涅槃図というのがある。それを別物に見立てて描いた図である。いわゆるパロディだが、昔っからこういうの考えるもんなのねというところに驚きである。そしてまた無駄に拘って仔細細やかに絵がかれているところが更に驚きである。芸が細かい。。
1位 影!~心の眼で見てください~
チラリズムもいいところである。
影絵みたくに人を全部影というか白黒でうっすら描いている図である。見えるか見えないかがいい!というのはわかるが、この絵はそういう問題ですらない。シルエットだけ描いて、後はがんばれである。ファイ!
1位は描画の手法自体がいろいろ次元が違う人が描いたとしか思えないということで衝撃を受けた。ほかはほら、相手変えたり、ディテールにこだわったり、ある意味順当な今でも多様性だ。その中でこれだけどうも方向性が明後日すぎるのがすごかったのである。
余談~みゃうみゃう
葛飾北斎の偉業のせいなのか、春画は江戸時代から絵柄に文字を入れてその場のセリフをつけたりするようになる。その絵の中で猫のセリフもあったりした。寝ていたところを男女二人がイチャコラし始めてボヤく猫、その最後に鳴き声があった。「みゃうみゃう」って。
昔の人が、動物をどういう風に鳴き声を表現したのかって具体的に見たことがなかったので、この「みゃうみゃう」はとても新鮮だった。
この春画展、とても人気で私たちがいったときも午後からは入場制限をかけられていた。入場制限の前から中はごった返しで、最初の展示室を見るのには牛歩さながらであった。昔の人もこんな感じのおしあいへしあいな気持ちだったのかなぁと思ったり思わなかったり。
やっぱりコンテンツとしてエロは強いし、なんというか、理由なく行ってみたいって思うんだよね。
ちなみにこれは今回の展示向けの春画展図録。背表紙は敢えてなくしてあり、ひろげてみやすい仕様となっているが、この分厚さ!
春画展は12月23日まで月曜日休館、JR目白駅からバス、東京メトロ有楽町線「江戸川橋駅」より徒歩15分、東京メトロ副都心線「雑司が谷駅」より徒歩20分の永青文庫にて開催されている。興味あるもの参加されたし。