自分の印象と他人の印象は異なるものだといわれているが、食事については同居人のかっちゃんによく言われる。
「あなた、食いしん坊だから食事にうるさいんだよ」
おいおいセニョリータどういうことだい。君の作ったごはんに文句なんてつけたことがないだろう? そう、ワタシ食事に文句言わないんである。でもかっちゃんはのたまう。
「口ではおいしいとはいうけど、食事量に各段の差が表れるんだよ」
と。マジデスカ。
かっちゃんは、ある実験をくわだてたのだという。
AのバターとBのバター
休日の朝食の時、パンを食べる食卓に日にち違いでメイカー違いのバターを用意したらしい。 らしいというのは後から聞いたからであって、いつの間にそんな実験が企てられたのかもついぞ知らなかった。たぶん言われるまで絶対に気付かなかったであろう。
そして実験結果が出た。
ワタクシ、Aのバターはよく食べたらしい。しかしBのバター、一口食べてその後あまり食指は動かなかった――かっちゃんはそう邂逅する。
「ちなみに、Aのバターはカルピスバターで、Bのバターは明治のバターだよ。もちろんおいしいのはカルピスバターの方」 「んなばかな!」 「んなばかなことじゃないよ! ちゃんと半年間空けてやってみたから、確かだよ」
何が確かなのか。私の肥えた口が確かなのか。 ていうか半年間空けてやるものなのか。 何度も言うようだが、私はバターのメイカーが異なっていたなんてもちろん気づいていない。ホントだってば!
しかし思い当たる節もある。
ばかすか飲んだ中国茶
仕事で中国に出張になったことがある。中国と言えば中国茶!というわけで、現地で働いている日本人の人に中国茶を扱っているお店につれてってもらった。
店内には、店員らしき女性。もちろんサンプルとしてお茶を振舞われた。一杯飲む。
しばらくして男性が帰ってきて、同様に彼からもお茶を振舞われた。一杯飲む、中国茶について話す、一杯飲む、話は続く、一杯飲む、またまた話は・・というようなエンドレスになって、おちゃっぱの種明かしがされた。
「これね、1袋8グラムで600元ぐらいなんだよ」
えーーーー?!
1袋8グラムというと、1回で飲む量である。その1杯飲む量で、その値段とは・・・! 確かにおいしい、というかおいしいという感覚すらないまま湯水のごとくに飲んでいた。中国茶というのに、途中でクセのあるいがいがした感じもなく、始終清々しさだけが残るおちゃっぱ。さすが値段は嘘つかない。
その店では茶器と茶葉を買ってなんとかまけてもらって所持金で収まるようにしてもらった。勉強ついでに先ほど飲んだ茶葉を一袋サービスにつけていただいた。
無意識でも、無意識だからこそ?
何度も言うようだが、二つともどっちがおいしいかなんて考えたこともなかったのだが、どうしてこうだか、私の行動は如実に差異があったようで、要するに美味しいものなら食が進むということです。
ちなみにこんな話をしたのは、まぁ食の話が多くなるよってことです。