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【映画】君たちはどう生きるか感想(ネタバレあり)

 観てきた。

 以下ネタバレなのでまだの人はご注意を。

 

 

 

 ここまでくるともう神話のようだと思った。細かいエピソードはぶっ飛ばして、最初は戦争ものなのかと身構えていたけど、そうでもなかった。ただ、思った以上にファンタジーな話でびっくりしたし、思った以上にアオサギがでしゃばるのも予想外だった。

 

 神話のようだと思ったのは、エピソードがあまりに抽象的すぎるし、何より後ろを向いてはいけない、というのが、神話っぽい話ですよ、という前ふりなのかもしれない。

 抽象的だとは言え、確かに戦中で、主人公はどこかのいいとこのぼっちゃんで、母親は病院で亡くして、母親の妹が義母になることになって、父は工場長で、というのはあの言葉少ない画面だけでよく読み取れるものであった。

 でもそこにある関係性は、注視してこないと見ないものだし、あるいは、自分がそう見えようと妄想を掻き立てる大きな余白しかなかった。

 

 主人公は思ったより性格が悪かった。引っ越し先の小学校の生徒と喧嘩をして、その後自分で傷を作った。が、その傷をだれかにやられたと言い切れる程でもなかった。宮崎駿の主人公は、どちらかといえば清廉潔白なキャラクターが多かったから、なぜこんなことをしたのか不思議ではあった。でも、学校に行きたくないのか、敢えて悪いことをするようなのが、この映画の主人公である。これは、すごく見る私たちにとっては、近しい人間に見えるようになった。

 

 あのうさん臭い青サギに誘われて、義母の夏子が神隠しに逢い、その夏子を助けに不思議な世界にやってきた主人公。

 

 不思議な世界は、とりあえず私はあの世とこの世の境目のような場所という認識だ。白い木霊は浄化されてこれから現世に生まれていく命。そして黒い者たちは、亡くなってしまった者たちだろうか。この世界の中で飯を食べて浄化されて、木霊になっていくのかどうかはわからんが、まぁ生者の手前と死者が同居している世界、というのは理解できた。

 

 しかし、そこにペリカンが住んでしまい木霊を食べてしまったり、インコが住んでしまい、インコがのさばったりしてこの不思議な世界も割と大変な感じになりつつある。

 

 さてこの不思議な世界は、主人公の大叔父様がどうやら、異界からやってきた物体にあった石と契約して作った世界のようだった。主人公はなんやかんやと、あのうさん臭い青さぎとも途中から仲良くなり、母親も見つかり、義母の夏子も見つけ、最終的には大叔父様と出会うようになる。そしてこういわれるのだ。「この世界の主になってくれんかね?」と。

 

 大叔父様は爺になっていつ亡くなってもおかしくない状態だ。そして彼の仕事はこの世界を素晴らしい世界に構築していくことであり、その作業は白い積み木を1日に3個組み立てるというものだった。しかし、この積み木、ちょっと息をふいたりしてようやく1日永らえるという、誠不毛な仕事でもある。

 

 主人公の考えられる選択肢はこんなものがあった。

 

 一つ目は、この不思議な世界の主となり、母親を助ける。

 二つ目は、義母の夏子をつれて、現世に戻る。

 

 結局母親に説得され、主人公は二つ目の選択をし、夏子とともに現世に戻った。

 めでたしめでたし。

 

 

 ここには、私たちがこの世界でよく起こるであろう出来事が出てきた。そしてそれらに自分なら、どういう選択をしてそして生きていくのか、そういう物語だったように思う。

 

 身内と別れてしまい、そこに後悔を残す。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 新たな身内ができてしまい、それに戸惑う。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 新しい世界を強いられそこになじめない。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 親のふるまいに、自分にしてもらっているとはいえ、嫌気が差す。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 うさんくさい話とはいいつつ手を出してしまう、不思議な大叔父の世界。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 うさんくさい野郎が割とそうでもなく、いいところもあったと知る、アオサギ。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 用意された選択肢が、必ずしも最適解ではないという、悪意のある積み木。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 死者を助けるありえない選択肢を、結局はしないと確定させるという、事実。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 親しいものから嫌悪を示されるという、裏切り。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 嫌悪されてもなお手を指し伸ばすという、努力。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 自分の意地悪さを認めるという、反省。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 すべてを捨て、用意される新しい世界という選択肢。

 君たちはどう選び

 君たちはどう生きるか。

 

 

 神話では、炎で亡くしたイザナミを黄泉の国から連れ出そうとしたイザナギは、結局逃げてしまい、イザナミと決裂するという結果を生んだ。

 

 この映画の主人公は、新たな母親を連れて、現世へと戻った。大叔父様には友達をつくると、宣言していた。

 不思議な世界はもうない。現世だけが残された。

 

 

 何かしら憂いや心配、苦悩があったとき、私たちはこの映画をふと思い出しては、また見るのかもしれない。一つの選択肢の解として、この映画はとてもなじむから。