友人は言った。
「ブームの真っ只中にありながら、全く触れなかったことにコンプレックスがあるんですよ」
——至極同意である。
エヴァンゲリオンの映画が公開された。
エヴァか。
エヴァね。
エヴァというと、私の思春期真っ只中のころに放映された。私の世代は、別にオタクじゃなくてもだいたい見てるんじゃないかと思われる、そんな感じだった。
エヴァだよ。
そうよそうよエヴァよ。
しかし私はエヴァを見ていなかった。全くもってみていなかった。テレビシリーズから見ていない。いわんや映画などを見るわけもなく、わざわざ予習用に放映されていた映画もすっ飛ばした。
逃げちゃダメだ、大人のキスよ、シンジくん! という言葉だけは覚え、最後の拍手のシーンとか人造人間のソースは〇という盛大なネタバレだけは記憶し、中二のカタルシスの集大成のような(語弊)テレビアニメを、私は知らずに大人になった。
あれから何年。
長い期間を経て映画は公開された。
コロナ禍の中、列島は静かに熱狂し、エヴァの記事を見かけるようになった。私は、一応ネタバレ回避のために気にはなるが見ないように気をつけた。滑稽な事に、見る予定など立てていないにも関わらずである。
同居人は言った。
「あんなに流行っていたのに見てなかった人がいるのね」と。
はい、YES、是、その通り。
ここにいます。
何故?
なんてことはない。
当時見れるテレビのチャンネルでは放映されなかった。
それだけである。
当時、私は奈良に住んでいた。当時エヴァンゲリオンを放映していたのは大阪テレビ。しかし我が家で見れたのは、テレビ京都と奈良テレビ。どちらもエヴァは放映していなかった。
見たら負けかなと思っているとか、この潮流に抗うのが私の正義!とか、そんな大層な理由でもなく、私は物理的に見れなかった、それだけである。
と、いうのにもである。
無様なものだ。
エヴァを見てようが見ていなかろうが、特段生命に危機があるという訳では無い。
それでも、巷が熱狂的に騒ぐ中、その熱を全く理解できない立場にいるのは何とも居心地が悪い。
何だろうな、こんなに日本中が熱狂しているにも関わらず、全くもって積極的には取り込もうとしていないことに、コンプレックスというか罪悪感というか、そんな気持ちが湧いてしまう。
単に環境的に見れなかったというだけなのに。
そんな折、友人がClubhouseに部屋を立てた。にわかがエヴァンゲリオンの映画を見ながら有識者に解説してもらおう、という部屋が。
逡巡した。
この機会を逃せば、私はもうエヴァンゲリオンを見ないだろう。見るなら今しかない。思い立ったが吉日とばかり参加した。
参加後。
初見で解説付きは厳しいということがわかった。
それもそのはずである。本編を見聞きながらも、並行して部屋の話も取ろうとしなければならないのだから。ぶっちゃけパパだまって状態である。しかもClubhouseは音が悪い。わざとラジオ音源のような感じにしてるんだろうか。それともいいイヤホンだったら聴きやすくなるのだろうか。
さすがにこれではいかんと思って、解説前の予習として破を見た。そしたら、家のテレビが音源的にいい仕事をしていることがわかった。家のテレビは4K対応のテレビで、すっかり忘れていたけど4スピーカー構成だった。破の音源はこういったタイプ用に対応されてて、遠くの声が、え、なんでそこから聞こえんの?みたいな感じで聞こえてくる。多分4つ使い分けてるよねコレ。こういう風に聞こえるように調整できるなんて初めての経験がだけでもよしとしよう。
内容は、……う、うーん。わかるわけなかった。とにかく環境設定自体からして不十分であってサードインパクトて何なの人造人間て何なの使徒と戦う理由とかいや囲ってるアイツはなんでなんですか、とかおいしそうな情報だけは散らばせておきながら、その説明を全くしない拒絶感だけが強かった。組織としても敵対しているのは多分ここ、だよね?という感じである。この情報の歯抜け具合は、他の説明を優先するために除外されてしまったのか、それとも、わざと点ポイントに媒体を配置することで、敢えて個人が無意識に行われる認識補完を狙っているのかは解らない。
いずれにせよ、今エヴァを見ても思春期に見たら感じるであろうインパクトは再現できないことはわかった。私の中ではそういったもどかしさはある程度昇華され、形を変えていることはわかる。
ひとまず、友人の波に一緒に乗っかっていれば、一人ではつらく苦しい履修もそこまでもなさそうだというのがわかったし、今回を逃すともうエヴァは見ないだろうということで、これからも続けて履修する事を改めて決意を固めた。
そもそもは、今回の映画を見るには、初見は厳しいということからだったはずなのだが……
さて。
今放映されている映画を見るために、最低限楽しめるための最短ルートも有識者から教わった。
新劇場版、旧劇場版があること、序破Qは本編のおおよそダイジェスト版であること、「Air/まごころを、君に」は3編(「エアー」「まごころ」「きみに」)だと思っていたが1編であることなどを叩き込む。
最短ルートはこんな感じらしい。
- 序 EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE.(2007年)
- 破 EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.(2009年)
- Q VANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.(2012年)
- Air/まごころを、君に(1997年)
Airなんとかは25話、26話に相当するお話なのだそうで、抜けられないらしい。この4つを履修すれば、今回の映画は楽しめられるそうだ。
これ以外にも、以下のような履修科目はあるが、とりあえず上記が必須とのこと。
- 新世紀エヴァンゲリオン(全26話:1995~1996年)
- 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生(1997年)
- DEATH true 2(1997年)
更にこれ以外にもマンガ版、パチンコもホントは見た方打つ方がいいらしいけど(有識者よ)まあ切りがない。
序破Qはアマプラで見れるとしてAirがない……と思ったら、Netflixで見れることが分かった。
https://www.netflix.com/jp/title/60024788
Netflixだけは本編もサブスク対象のようだ。他はレンタルしかなさそうである。これはAirを見るなら腹をくくるしかなさそうだ。