「薔薇王の葬列」は、かのシェイクスピアの小説をもとに作成されたマンガが原作で、この度アニメ化された作品だ。
「薔薇王の葬列」だが、いつもなら見るのを終わりそうなアニメなのにまだ続けてみている。というのも、このアニメ、作りが『低予算なんだけどがんばっていい雰囲気で作るように努力している』からだ。
制作と切っても切れない予算の関係
何かをするには予算というものが必要になる。それを作るために使えるためのお金。いろいろアニメを見続けていると、あ、このアニメは予算ある、予算ない、というのがアニメの作りで分かってくる。
いかに予算を使わず時間を作るかのテクニックを消費者側でも覚えてくるのであった。例えば、声優が新人ばかりだったり、動きが少なかったり、デジタル動画入れなかったり、本編以外の時間を作っていたり、前回のあらすじで時間を割いていたりなどなどだ。
ワールドトリガーシーズン1も低予算だった
例えば、今シーズン3の終わった盛況なワールドトリガーだが、シーズン1の時は、かなり予算がない方だった。それを指摘したのは私の友人だったが、確かにさもありなんだった。
上記で話したコストカット策のうち、ワールドトリガーで取っていた策は、そもそもの本編の時間を削るという大胆なやり方だった。シーズン3では全く見られなくなった前回までの振り返りだったがシーズン1ではお約束、終わった後の寸劇でもって本編の時間を稼ぐという二種の構成だった。かわりに動画のクオリティは下げず、声優へのコストは潤沢に、そういう戦略でもって作られていた。
ワールドトリガーは動作が命のアニメだからなーそうならざるを得ないな、と納得の配分である。
そのおかげでシーズン3に至るようになって予算もとっても潤沢になり、とてもいい出来で、振り返り時間は要所部分はあるもののほぼなくなった。
コロナになって、それまで見てきた洋画ドラマも減ってきて、気軽に見れるアニメを見る量が増えてきたのだが、その分目も肥えてきた。予算という意味で。
そんな中、気になるアニメが出てきたのである。
それが「薔薇王の葬列」だ。
「薔薇王の葬列」の騙され感
私が、このアニメで非常に違和感を持っていたのは、なんかいい雰囲気に見えてるんだけど、隠しきれないハリボテ感は何だろうか、という違和感である。
とにもかくにも雰囲気はいい。退廃的な色合いで、時たま差し込まれる紙芝居が独特の雰囲気を醸している。へえ、このアニメはこういう演出で統一感を出しているんだー、と最初は思った。
最初は。
しかし、回を重ねる毎にその印象からは違和感を感じずにはいられなかった。ダイジェストともいえる余韻なし、1クールでどこまで巻を進めるつもりなの的なスピーディな話展開。それよりなにより、動かねえ! いや、そこはせめて動画! 差し込もうよ!! そんな場所ですら省電力構成の動作すぎて見ているこっちがハラハラするぐらいである。
さすがの私にもこれは演出どころの話でもなく、演出と見せかけた苦悩の産物だと理解するようになった。そう、その苦悩は、低予算。
低予算でなんとか雰囲気よく見せるための方策
それでも「薔薇王の葬列」は頑張っている。気になる点もあるけれどもそこそこがんばってんじゃねーの、そういうゴールに持っていこうとする気合が見受けられる、最大限の試行錯誤を経たアニメのように見える。
全体的な方針としては、「動画はなるたけ極力できるだけどうやっても作らないっ!」これにつきる。
方策その1:動画は大胆にカットカットカットーーッ!
どうやらこのアニメ、動画の人材が壊滅的にいないらしくて、とにかく動画らしい動画がない。口は動く、足も動けばいい方、180度回転なんてもってのほか、動作縛りしてんのかっていうぐらいに動かないのである。そこは動きを!と思っても、顔をアップしたりして動きを見せないとか、この動画が見たい気持ちをことごとく潰してくるのだ。
本気で動画回りかける人いないんだろうな、と思わずにはいられない。
方策その2:紙芝居を入れ演出感に統一感を入れる
そんな中、うまく雰囲気を出していたのがこの演出である。
そしてこれが一番騙された理由の一つなんだろう。このアニメ、途中途中紙芝居を入れることで、雰囲気を出している。
何度も言うが、雰囲気作りはむちゃくちゃ美味い。全体的に灰褐色な色合いなんだけれども、要所部分の色を際立たせるのに役立っているし、反対に紙芝居の部分は色を付けることで、明確に区別している。
こうして紙芝居を入れることで、動画時間を縮小することができる。つまり、この演出は、動画を作る時間自体をカットする方策でもあるのだった。
方策その3:いい声優はまあまあ採用
演出はよくても最大の印象付けが声優となる。ここはがっつりきっちり予算を取って採用しているのがよく分かる。動画に無理感は感じるのに配役には無理感がない。
ベテラン:若手=5:5ぐらいに採用してるのかな、いいバランスしてる。アニメは声優がよくないとホント見る気がしない。けども、全員がよすぎてもそれはお腹いっぱいなので丁度いいメンツ構成だなと思った。
方策その4:音楽はよくする
さらによく考えているのが音楽。音楽が雰囲気いいので、動画がさもありなんだけれどもなんとなく見てしまうという構図が出来上がっているのだった。
音響いいもんな、と思ったら岩浪美和監督だった。岩浪監督は私は信頼を置いていて、何せあのジュエルペットサンシャインの音響やってたからな。
こうして、動画はアレだけど原作の雰囲気をなんとか再現しようとがんばっているアニメができあがったのだった。
何度も言うけど、マジがんばって、少ないリソースの中最大限の効果を発揮されていると思う。嗚呼、これで動画マンの確保さえできれば、と涙を流さずにはいられない、そんなアニメに仕上がっただろうと思われる。
だが、いろいろ検討した結果、別に動かない、という一点以外はそこそこ予算はあったのでは?
音響いい監督だし、何より統一感のある演出ができる点で、監督はいい監督だよね・・・?
制作会社はJ.C.STAFF
ここまでくると、内政的に事情があるのではと気になり、制作会社を見てみることにした。どうやら制作はJ.C.STAFFというところらしい。最近のアニメは何を作ってるのかなー。なるほど、今期冬は「薔薇王の葬列」以外に、2作作ってるのかー。ふーん。
あ。。
これ、予算コストよりもリソースの枯渇じゃないの?!
「失格門の最強賢者」も実は見ているアニメの一つだけども、こっちはよく動いていた。「薔薇王の葬列」の50倍ぐらいよく動いていて、多分動画描ける人がほぼこっちとかもう一つのアニメにかかりっきりな気がするー。
だが、リソースを確保するのも予算のうちなので、やっぱり低予算というくくりでは合っているのかなと思う。